オーストラリアドル(豪ドル)を取引する前に確認すべきポイント


オーストラリアドル(豪ドル)は高金利が魅力!?

オーストラリアは日本との関係が良好であることもあり、海外旅行先としてだけではなく、主要国の中でも政策金利が高いためオーストラリアドル(豪ドル)は日本人に馴染みの深い通貨の一つです。

豪ドルの魅力は何と言っても主要国中で最も金利が高いことでしたが、2008年のリーマンショックが引き金となった世界的な景気後退の影響で主要国の政策金利が引き下げられ、オーストラリア準備銀行(RBA)も同様に政策金利を引き下げたため、2017年8月現在では1.5%とかつての高金利通貨としての魅力は薄れています。

とはいえ、世界の経済情勢の改善により、今後の展開次第では再びオーストラリアが利上げモードに入るという可能性も十分に考えられるだけではなく、相対的には依然として金利が高いので目が離せない通貨の一つであることには変わりありません。

世界の為替取引の統計を見てもドル、ユーロ、円に続き豪ドルは取引量が多く世界中で活発に取引されている通貨です。

豪ドルに影響を与える要因

政策金利

豪ドル相場に影響を与える代表的な要因のひとつにオーストラリアの中央銀行であるオーストラリア準備銀行(RBA)の政策金利が挙げられます。

比較的経済が安定している先進国の中でも金利の高いオーストラリアの政策金利の動向は世界中の投資家にとって関心が高い材料です。

RBA政策金利の推移

オーストラリア準備銀行(RBA)は政策金利をリーマンショック前の7%台からリーマンショック直後には3%まで引き下げました。

そして、リーマンショック直後の混乱が落ち着くと、当時成長率がピークに達していた中国経済の資源需要に下支えされオーストラリア経済も底堅さを見せたことで、5%に迫るところまで政策金利が引き上げられました。

しかし、その後、中国経済の減速や資源価格の下落などが影響し、オーストラリア経済にも減速傾向が強まったため、RBAは1.5%まで引き下げました。

昨今のオーストラリア経済の状況を見ると景気の減速感は薄れ、追加利下げへの警戒感は薄れていますが、RBAの姿勢には利上げに向かう気配は見られず、中立姿勢を保っています。

RBAの政策金利と豪ドル/米ドルの動き

RBAの政策金利と豪ドルの対米ドル(AUDUSD)の動きを比較した下のチャートを見ると相関性が強いことが確認できると思います。

一般的に、為替相場は実体経済の動きを先取りする習性があり、市場関係者は「RBAが今後どのような金融政策を行うか」ということに常に注目しています。このため、経済指標や中央銀行関係者のコメントなどにより金融政策の変更が予想された段階で先に動く傾向があります。

つまり、金利が高い水準でも追加利上げが想定しにくい場合には上値が重くなり、金利が低い水準でも追加利下げの可能性が低い場合には底堅い動きとなるということです。

直近の動きを見るとわかりやすいのですが、各種経済指標やRBAが発する情報から利下げサイクルが終焉を迎え、次第に利上げ観測が強まっていることで比較的底堅い動きとなっています。

RBA政策金利とAUDUSDの推移

RBA政策金利と豪ドル円の動き

では次に、RBAの政策金利と豪ドルの対円との関係を示す豪ドル円(AUDJPY)相場はどうなっているでしょうか?

下の豪ドル円のチャートを見ると、2011年終盤までは相関性は高かったものの、それ以降は相関性が崩れていることが確認できると思います。

その理由は日銀が実施した大規模な金融緩和の影響により、円が大きく売り込まれた結果、RBAも利下げしていたにも関わらず相対的に金利の高い豪ドルは対円で買われたからです。

そして直近の動きを見ると、RBAの政策金利との相関性を徐々に取り戻しているように見えます。

このように為替相場は2通貨の交換比率であるため、通貨ペアの一方の要因だけではなく、相手方の通貨の事情も値動きに大きく影響します。投資判断をする場合は必ず双方の通貨の事情を勘案する必要があります。

RBA政策金利とAUDJPYの推移

消費者物価指数の動向

中央銀行の金融政策を占う上で重要な経済指標の一つに「消費者物価指数」があります。

オーストラリアの消費者物価指数は四半期毎に発表され、豪ドル相場に大きな影響を与えます。

RBAはインフレ率を2〜3%の間に収めることを目指して金融政策を行なっています。

ちなみに、この目標値をインフレターゲット政策と呼びます。

したがって、インフレターゲットを消費者物価指数が上抜ける、または上抜ける可能性が高まってきた時点でRBAは利上げして物価上昇を抑えようとします。

そして利上げを行うことは豪ドル高につながるため、輸入物価も抑制されるので物価全体を押し下げる効果があります。

逆に、インフレ率が2%を下回ったり、下回る恐れがある場面では政策金利を下げ経済を活性化させようとするので、結果として物価も上昇します。

そして利上げの場合と逆に、輸入物価の上昇が物価全体を押し上げる効果があります。

下のチャートでRBAの政策金利とオーストラリアの消費者物価指数の推移を比較して見ると、RBAの金融政策と消費者物価指数の間には高い相関性があることが確認できます。

オーストラリアの消費者物価指数とRBAの政策金利

赤のラインが消費者物価指数の推移で黄緑の点線がインフレターゲットのバンドです。

現状は利下げ効果で経済が回復基調にあり、消費者物価指数も上昇傾向にあるとはいえ、依然として2%台を回復できるかどうか微妙な水準で推移しています。

労働市場の動向

その国の経済情勢を探る上で、労働市場の動向も重要です。

経済情勢が良い状態のときは雇用が安定し、失業率が下がるというのは容易に想像がつくと思います。

オーストラリアでは毎月失業率や新規雇用者数などの雇用統計が発表されており、その結果次第では豪ドル相場が大きく動くことがあります。

下のチャートでRBAの政策金利と失業率の相関関係を見ると、逆相関性が強く、景気が後退し失業率が上昇する局面では、政策金利が引き下げられていることが確認できます。

オーストラリア失業率とRBAの政策金利の推移

RBA関係者の豪ドル高懸念コメント

オーストラリアの主な輸出品は鉄鉱石や石炭といった資源です。

このため、豪ドル相場が高くなると競合する国に比べ、交易条件が悪くなり、オーストラリアの経済に少なからず影響を与えます。

また、豪ドルが高くなると、輸入品の物価が下がり、物価全体を押し下げる効果もありインフレターゲットの達成にも悪影響を及ぼします。

このため、RBA総裁をはじめとするRBA関係者やRBAの政策金利発表時の声明文などにおいて、豪ドル高を懸念するコメントが出ることがあり、その結果豪ドル売りが強まることがあります。

過去には具体的な相場水準が適正であるとのRBA総裁のコメントを受け、豪ドルが大きく売られ、言及した水準近くまで下落したこともありました。よって、RBA総裁、その他RBA関係者のコメントには注意が必要です。

資源価格の動向

前項でも触れましたが、オーストラリアの主要な輸出品は鉄鉱石や石炭等の資源であるため、これら資源価格の変動に連動して豪ドル相場も動くことがあります。

鉄鉱石価格や石炭のリアルタイムの価格を一般の方がチェックするのは簡単ではないのですが、大きな流れを把握することは可能です。

その一つの方法が比較的容易に入手することができる原油価格の動きを見ることです。原油価格はその他の資源価格にも大きな影響を及ぼすからです。

実際に原油価格と豪ドルの相関性は高くなっています。

オーストラリアは資源輸出国というイメージが強いですが、実は原油に関しては輸入に頼っています。このため、原油高は本来豪ドル売り材料となるはずなのですが、それ以上に原油価格が他のオーストラリアの輸出品目に与える影響が強く、結果的に原油価格との相関性が高くなっているのです。

下のチャートは原油価格(WTI)と豪ドル(対米ドル、AUDUSD)の価格の推移です。トレンドの方向性は同じになっていることが確認できます。

豪ドルと原油価格の推移

株式市場との関係

豪ドルは先進国の中では比較的高金利であるため、市場全体のリスク許容度の高い場面では買われ易く、リスク回避色が強まる場面では売られ易くなる傾向があります。

つまり、市場リスクが高まっているのに、のんきに金利を狙っている場合ではなくなるという状態になるとうことです。

このため、特に低金利の国の通貨との関係では、その傾向が顕著になります。

下のチャートで日経平均と豪ドル円の推移を見るとその傾向が強いことが確認できます。

日経平均と豪ドル円の推移

さらに、豪ドル円が日経平均との連動性が高いことの背景には、市場のリスク許容度が円の強弱に強く影響するということも挙げられます。

市場のリスク許容度が低くなる、つまりリスク回避度が高まる場面では次の3つの条件を満たした通貨が強くなる傾向があります。

①低金利

②低インフレ

③経常収支黒字

この条件を満たす通貨は現在、円、スイスフラン、ユーロです。(ただし、リスクの対象がその通貨に対しての場合は逆に売られることもあるのでご注意ください)

昨今ではオーストラリアを含む世界的な金利の低下を背景に、かつての高金利通貨としての豪ドルの魅力は低下しており、豪ドルと株式市場の相関性は低くなっています。

下のチャートでNYダウと豪ドルの対米ドル相場(AUDUSD)の推移を見ると、豪ドルの金利が3%以上あった2013年頃まではNYダウとAUDUSDとの相関性は高かったものの、 RBAが追加利下げを行い政策金利が低い水準にあるのに対し、米国は利上げを行いオーストラリアと米国の金利差が縮小するに連れて、株式市場との相関性は低くなっていることが確認できます。

NYダウとAUDUSDの推移

オーストラリア、米国、日本の国債利回りの比較

オーストラリア、米国、日本の国債市場の債券利回りからも豪ドル相場との相関性を見出すことができます。

各国の債権市場は政策金利とは違い日々変化するものですが、その時点での各中央銀行の金融政策の動向や市場のリスク許容度が反映されています。

例えば、利上げが意識される場面や株式市場などリスク資産が選好される場面では、安定的な国債からより大きなリターンを狙うことのできるそれらのリスク資産に投資資金が流れるため、国債が売られ国債利回りは上昇します。一方、市場のリスク回避色が強まる場面では比較的安全資産と考えられる国債は買われ国債利回りは低下します。

つまり、国債利回りを見ることで市場の利上げへの期待度やリスク許容度を読み取ることができるのです。

豪米日の10年債利回りの推移

各国の国債利回りの差に注目すると、その通貨ペアの動きを把握しやすくなります。

下のチャートはオーストラリアと米国の10年債の利回りの差を示したもの(豪10年債利回り − 米10年債利回り)と豪ドルの対ドルでのレート(AUDUSD)の推移です。

豪10年債利回りが上昇し豪10年債と米10年債の金利差が広がった場合にはAUDUSDは上昇基調が強まり、逆に金利差が縮まった場合にはAUDUSDは下落基調が強まるという特徴があります。(現在のように豪の金利が高い場合)

金利差が縮まると、米ドルを売って豪ドルを買うメリットが減少するため、豪ドル買いポジションの解消が進むからです。

2010年以降、2国間の金利差が縮小するにつれて縮小するにつれて豪ドルが売られていることが下のチャートからも確認できます。

豪米10年債利回り差とAUDUSDの推移

次にオーストラリアと日本の10年債利回りの差と豪ドル円(AUDJPY)の価格の推移をチェックして見ましょう。

対米ドルのときと同様に、金利差が拡大する場面では豪ドル円が買われ、金利差が縮小する場面ではAUDJPYが売られていることが確認できます。

現状では日本の国債利回りは底辺を張っている状況なので上下動しても影響はほとんどなく、豪10年債利回りの上下動に併せて金利差が動くような状態です。

このため、市場のリスク回避色が強まり、国債市場全般の利回りが低下する局面ではこの金利差は縮小し、豪ドル円は大きく売られることがあります。

豪日10年債利回り差とAUDJPYの推移

オーストラリア経済の現状と今後の見通し

GDPの推移

オーストラリアのGDPは2008年のリーマンショック後でも中国の資源需要などに支えられ、比較的底堅く推移してきました。その後の中国の景気後退、資源価格下落の影響により 上昇基調は和らぐものの、比較的良好な状態を保っています。

直近では2016年には資源価格の下落の影響などを背景に一時的に停滞する局面もありましたが、世界経済の改善を背景にすぐに持ち直しています。特に鉱業以外の産業が底堅さを見せており、全体を通して堅調な推移が続いています。

期間 2016年1Q 2016年2Q 2016年3Q 2016年4Q 2017年1Q 2017年2Q
GDP   (前期比) +0.5% +0.9% +0.7% -0.4% +1.1% +0.3%

インフレ動向

インフレに関しては資源価格の下落の影響により、RBAのインフレターゲットを下回る水準での推移が続いていましたが、直近では利下げの効果による景気回復もあり、徐々に上昇傾向になっています。

ただし、今年の第2四半期には再び2%を割り込み伸び悩む結果となっているため、利上げを行うには時期尚早と言えそうです。

実際にRBAの政策金利発表時の声明文を見ても中立姿勢が明確となっており、現状は利下げの効果を見守り、物価の上昇基調をしっかりと確認したいというスタンスです。追加利下げの可能性は低いとはいえ、利上げに関してはまだしばらく先の話となりそうです。

利上げのタイミングとしては、消費者物価指数が2%後半まで上昇するような状況となった時に、本格的に利上げへの期待が高まるでしょう。

期間 2016年1Q 2016年2Q 2016年3Q 2016年4Q 2017年1Q 2017年2Q
消費者物価指数(前年比) +1.3% +1.0% +1.3% +1.5% +2.1%  +1.9%

労働市場の状況

失業率

労働市場の状況を探る上で一番代表的な指標に「失業率」があります。

オーストラリアの失業率はかつては6%台でしたが、着実に改善してきており、現在では5.6%となっています。もっとも、2008年頃までは4%台であったことを考えるとまだまだ高い水準にあると言えます。

期間 2017年1月 2017年2月 2017年3月 2017年4月 2017年5月 2017年6月 2017年7月
失業率 5.7% 5.9% 5.9% 5.7% 5.6% 5.7%  5.6%

失業率を見るときに併せて見るべき指標に「労働参加率」が挙げられます。

労働参加率とは「人口に対して働いている人の割合」のことです。

失業率が低下したとしてもこの労働参加率が低下しているようであれば、働く意欲を無くした人が増えたと考えられ、経済の状態は良い状態とは言えません。

逆に失業率が上昇したとしてもこの労働参加率が上昇した場合は働く意欲がある人が増えたと考えられ、経済の状態が悪い状態とは一概には言えないということになります。

オーストラリアの直近の労働参加率を見るとジリジリと上昇しており、ピークの頃の水準に近づきつつあり、良好な状況と言えるでしょう。

期間 2017年1月 2017年2月 2017年3月 2017年4月 2017年5月 2017年6月 2017年7月
労働参加率 64.6% 64.6% 64.8% 64.9% 64.9% 65.0%  65.1%

雇用者数の増減

オーストラリアの労働市場の状況を探る上で失業率と併せて注目度が高い指標に「雇用者数」があります。

一言で言えば、就労者がどれだけいるかということです。景気が良くなると雇用が増えるというのは容易に想像がつくと思います。

直近のオーストラリアの雇用者数の推移を見ると、順調に雇用が増えているのを確認することができ、良好な状態が続いていると言えます。

期間 2017年1月 2017年2月 2017年3月 2017年4月 2017年5月 2017年6月 2017年7月
 雇用者数変化 +4.4 +8.9 +52.8 +48.7 +39.6 +20.0  +27.9

この雇用者数の変化の状況を雇用の種類に分けて細かく見ることもできます。

オーストラリア統計局(ABS)ではこの雇用者数の変化を正規雇用とパートタイムに分けたデータも公表しています。

当然のことながら、雇用者数の増加が正規雇用者の増加によるものである場合には景気が良くなったと考えることができるのに対し、正規雇用が減り、パートタイムの増加によるものであれば雇用者数の増加もあまり良いものとは考えられません。

また、景気が悪い状況から、パートタイムが増える状況になった場合は、企業としては正規雇用を雇うまでの自信は持っていないが、仕事が増えて人は必要という状況であると考えられ、景気回復の前兆と考えることもできるでしょう。

この反対に、景気後退局面では通常、パートタイムから人員整理が始まります。正規雇用が増えず、パートタイムが減っていくような状況になった場合は景気後退に陥る前兆と考えられるでしょう。

直近のデータを見ると多少のブレはありますが、正規雇用者数の増加傾向が強く、雇用の質は改善に向かっていると考えられます。

期間 2017年1月 2017年2月 2017年3月 2017年4月 2017年5月 2017年6月 2017年7月
正規雇用者数変化 -57.6 +45.2 +67.0 -4.3 +53.9 +69.3  -20.3
非正規雇用者数変化 +61.9 -36.3 -14.2 +53.0 -14.3 -49.3  +48.2

オーストラリアの労働市場は比較的良好

これらのオーストラリアの労働市場のデータを見ると、失業率は依然としてピークに比べると高めに推移していますが、労働参加率や正規雇用者数の増加など全体の労働市場の状況は改善しており、オーストラリアの直近の労働市場は概ね良好な状況と考えられます。

オーストラリアの消費動向

消費動向を判断する経済指標の一つに「小売売上高」があります。

小売売上高は毎月の変動が激しい経済指標ですが、最近のオーストラリアの小売売上高の推移を見ると、概ね上昇傾向にあり、オーストラリアの消費動向は好調を維持していると言えるでしょう。

期間 2017年1月 2017年2月 2017年3月 2017年4月 2017年5月 2017年6月
労働参加率 +0.4% 0.0% -0.1% +1.0% +0.6% +0.3%

 オーストラリア経済の現状まとめ

これらの経済指標の結果をまとめると次のようになります。

GDP  ○
インフレ  △
雇用  ○
消費  ○

これらの経済指標から判断すると、オーストラリア経済は比較的良好な状態と考えることができます。

ただし、物価(インフレ率)が伸び悩んでいるため、RBAの利上げ観測が高まるまでには時間がかかると思われます。

外部リスク要因

世界経済の回復を背景にオーストラリア経済は好調をキープすることが想定され、物価の上昇基調が強まれば、RBAの政策金利の引き上げが意識され、豪ドルは底堅い推移となるというシナリオが考えられます。

ただし、豪ドルのレートを考える上では、オーストラリア1国の事情だけではなく、通貨ペアの相手方の国の情勢、また世界経済全体の状況も考えなければなりません。

現状では世界的に景気は良好な状態をキープしていますが、今後この好調が維持できるかどうかは依然として不透明な部分もあります。

直近では、次に挙げるようなリスク要因も残されており、豪ドルの上値が圧迫される可能性も十分に残されています。

一つづつ検証してみましょう。

リスク要因①株式市場の下落リスク

FEDのバランスシート縮小

株式市場のリスク要因として、近い将来に実施されるであろうFED(米国の中央銀行)のバランスシートの縮小が挙げられます。現在公表されているバランスシート縮小計画は緩やかなものであるため、市場への影響はそれほど大きくならないと考えられますが、リーマンショック以降、拡大を続けたFEDのバランスシートが縮小されるのですから金融市場に混乱が生じる可能性は否定できません。

現在、米国の株式市場は高値圏での推移が続いています。FEDのバランスシート拡大に併せて上昇を続けてきただけに、歯車が狂うと思わぬ下落となる可能性があり、その動きが世界的な株安へ波及するというシナリオは考えられそうです。

トランプ政権の政策不安

トランプ政権の政策への不透明感も株式市場の下落リスク要因の一つです。米国株式市場の上昇の背景にはトランプ政権の減税をはじめとした政策への期待感がありました。その政策が行き詰まるような状態となると、株式市場が打撃を受けるというのは容易に想像がつくと思います。

米国債務上限問題

直近では米国の債務上限問題も材料視されそうです。最終的には上限が引き上げられるということがメインシナリオですが、トランプ政権だけに市場の不安は高まり、最悪の事態も想定しなくてはなりません。もし債務上限引き上げに時間がかかった場合には株式市場へのダメージを与える可能性は高くなるでしょう。

その結果米国株式市場の下落が引き金となって、世界的な景気後退につながるようであれば、豪ドル円を中心に豪ドルの上値が重くなる可能性が挙げられます。(前述の株式市場との関係の項を参照)

リスク要因②資源価格の低迷

最近では原油産出国の減産合意などもあり、原油価格が底堅さをみせていますが、価格が上昇すれば米国を中心としたシェールオイルの産出量の増産、原油産出国の合意不調など原油価格の上値を圧迫する材料が出てくる可能性があります。

もし原油価格が伸び悩むような状況となれば、その他の資源価格の上値も抑えられ、豪ドルの上値を圧迫するという可能性は十分に考えられます。

リスク要因③日銀の出口戦略

豪ドル円を取引する上で注意しなくてはいけないものの一つに日銀の動向があります。

現在、FED(米国の中央銀行)が利上げを開始し、続いてバランスシート縮小に着手しようとしているほか、ECB(ユーロ圏の中央銀行)も近々緩和縮小を始めるとの見方が拡がっています。

これに対し、日本の中央銀行である日銀は緩和縮小に向けた動きが全く見られない状況です。このため、市場のリスクがそれほど高くない局面では主要通貨に対して弱い展開となっています。

しかしながら、もし緩和縮小に政策転換を行うことがあれば、相当のインパクトがあり、円買いが強まることは必至と考られますので、豪ドル円は下値を探る動きとなるでしょう。

リスク要因④北朝鮮リスク

市場が予想しにくいリスクの一つに北朝鮮情勢の悪化が挙げられます。米国と北朝鮮の関係は泥沼化しており、北朝鮮が米国領へミサイルを打ち込むリスクを排除できない状況が続いています。

もし、北朝鮮が実際にミサイルを発射した場合には市場全体のリスク回避色が強まるでしょう。

特に豪ドル円には売り圧力がかかることが予想されます。

豪ドルのテクニカル分析

豪ドル円(AUDJPY)

下のチャートは豪ドル円(AUDJPY)の月足チャートですが、これを見ると2014年からの下落基調は上昇基調に転じているものの、直近では上値の重い推移となっており、方向感を見出しにくい状況となっています。調整売りが85円台程度までで収まるようであれば調整ですみますが、85円を割り込むような状態になれば、さらに下値を探るというシナリオも考えた方が良いでしょう。

豪ドル円 チャート

日足チャートで見ると90円に迫る動きとなった後、失速していることが確認できます。

直近の反発もすぐに押し戻される動きとなっており、悩ましい動きとなっています。

米国政局不安、北朝鮮情勢、米国債務上限問題などの市場のリスク要因が多く、リスク回避の円買いが強い状態が続いているので、もうしばらく上値の思い状態は続きそうです。

AUDJPY日足チャート

豪ドル米ドル(AUDUSD)

下の対ドル(AUDUSD)の月足チャートを見ると下落基調が一段落し、一旦保ち合うような相場に入っていました。そして保ち合いを上抜ける動きとなり0.8台を回復していますが、小動きの相場になっています。

AUDUSD チャート

下のAUDUSDの日足チャートを見ると上昇基調が続いた後に下への調整が入りました。その後に調整売りの買い戻しが入っていますが上値は重く、このまま上昇基調が再開するのかどうかを見極める必要がありそうです。

調整のサポートとなった0.78付近を割り込むような動きとなるとさらなる下方向への調整も予想されます。

AUDUSD日足チャート

豪ドル円のスワップポイント

現在RBAの政策金利は1.5%まで低下しており、豪ドル円のスワップポイントも低下傾向となっています。

現在の各社のスワップポイントは1万通貨当たり1日30円〜40円となっており、年間で1万円から1万5000円程度の収益となります。

ただし、1万通貨を保有した場合、豪ドル円のレートが1円下落すると10,000円の損失となります。

もし、豪ドル円が1円以上下落すると仮定すると、スワップポイントの利益を吐き出してしまう計算となるので注意が必要です。

現状では、為替リスクをとって金利目当てでトレードするには寂しいスワップと言わざるを得ません。